――インターネットを介し繋がっていた親友が、「ありがとう」と一言残して音信不通になった。
たぶん自殺するつもりなのだろう。
悲しかったし、寂しかったけど、わたしが彼女にしてあげられることはしてきた自覚があったから、ただ「もし死後の世界があるのなら、どうか安らかに」と祈るばかりだった。
それから2週間程経ったある日、SNSのアカウントに彼女の妹によるメッセージが届いた。
「はじめまして。鴫原花柚と申します。
突然ですが、半月程前、姉である鴫原柚子(Albireoさんの相互フォロワーである幽雅)が行方不明になりました。
Albireoさんは行き先をご存じないでしょうか?」
曰く。ある日突然姉が消えた。
部屋には遺書が残されており、筆跡は姉のもの。
内容におかしな点はなく、スマホや財布は置き去り。
玄関に残った靴の種類からサンダルで家を出たことが分かっており、それほど遠くない場所で命を絶ったと思われる状況だった。
問題は、その後鴫原柚子の遺体が見つからないことである。
遺書の中には、「できれば海に散骨してほしい」「お葬式に学校の人は呼ばないでほしい」といった、自身の弔い方に関する記述があった。
遺書を残していて弔われる気もあるのなら、見つからないような場所で死ぬのは違和感がある。
鴫原柚子は未だ「行方不明者」として扱われており、行き先の手がかりすら見つかる気配がないのだという。
わからない。
死んだ筈の友達が行方不明になった理由。
彼女がどこに行ってしまったのか。
何より、生きていたとして、死んでいたとして。
あの子は今、安らかに在れているのだろうか――?
わからない、かつ知りたいのなら、知りに行くしか方法はなかった。
――「柚子さんの部屋を見せてもらうことはできますか?」。
わたしは、わたしの持つ共鳴、『過去視』を用いて彼女の足取りを辿り始める。
ゆうちゃんの部屋から、彼女が向かった先へ。
そこで起きた出来事と、その先へ。
見て、追って、辿り着いた場所に居た少年は、黒いローブの裾をはためかせ、夜色の瞳をぎらぎらと輝かせていた。
「土は土に、灰は灰に、塵は塵に――
キミも、奪い返しに来たンダロ?
大切な誰かの、とこしえのモノとなるハズだった安寧ヲ。」