このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
両方とも前のリビジョン前のリビジョン次のリビジョン | 前のリビジョン | ||
怪盗グレイと [2024/10/22 06:28] – mituitumi | 怪盗グレイと [2024/10/22 07:09] (現在) – mituitumi | ||
---|---|---|---|
行 4: | 行 4: | ||
=== prologue. 怪盗グレイと黄昏の罅 === | === prologue. 怪盗グレイと黄昏の罅 === | ||
――インターネットを介し繋がっていた親友が、「**ありがとう**」と一言残して音信不通になった。\\ | ――インターネットを介し繋がっていた親友が、「**ありがとう**」と一言残して音信不通になった。\\ | ||
+ | たぶん**自殺**するつもりなのだろう。\\ | ||
+ | 悲しかったし、寂しかったけど、わたしが彼女にしてあげられることはしてきた自覚があったから、ただ「もし死後の世界があるのなら、どうか安らかに」と祈るばかりだった。\\ | ||
\\ | \\ | ||
- | 彼女の生活環境や精神状態があまりよくないのは知っていたから、恐らく自殺するのだろうと思った。\\ | + | それから2週間程経ったある日、SNSのアカウントに**彼女の妹**によるメッセージが届いた。\\ |
- | せめてきちんとお別れが言いたくて、何度もメッセージを送ったし通話も数回鳴らしたけど、彼女が応じることはなかった。\\ | + | |
- | \\ | + | |
- | 悲しかったし、寂しかったけど、わたしが彼女にしてあげられることはしてきた自覚があったから、やりきれない思いはなかった。\\ | + | |
- | ただ、「**もし死後の世界があるのなら、どうか安らかに**」と祈るばかりだった。\\ | + | |
- | \\ | + | |
- | \\ | + | |
- | それから2週間程経ったある日、SNSのアカウントにフォロー通知が届いた。\\ | + | |
- | 見知らぬアカウントだったのでプロフィールに飛ぶと、女子高生が実名で運用する、所謂リア垢に当たるアカウントだった。\\ | + | |
- | 最新のものから順番に投稿内容を確認していく。\\ | + | |
- | 投稿頻度は日に2つ3つで高くないものの、ざっと遡って記録を総合すると、投稿者の家庭環境や構成要素は朧げに把握できる。\\ | + | |
- | それらの情報に加え、写真に写る風景や、自宅の壁紙、床板、家具等が完全に一致したことから、このアカウントの持ち主は「**彼女の妹**」であると断定された。\\ | + | |
- | \\ | + | |
- | こちらからもフォローを返すと、すぐにDMが届いた。\\ | + | |
\\ | \\ | ||
「はじめまして。**鴫原花柚**と申します。\\ | 「はじめまして。**鴫原花柚**と申します。\\ | ||
行 24: | 行 13: | ||
Albireoさんは行き先をご存じないでしょうか?」\\ | Albireoさんは行き先をご存じないでしょうか?」\\ | ||
\\ | \\ | ||
- | 行方不明?\\ | + | 曰く。ある日突然姉が消えた。\\ |
- | ゆうちゃんが、あの状態から死ぬことはあっても、行方不明になったりするだろうか?\\ | + | 部屋には**遺書**が残されており、筆跡は姉のもの。\\ |
- | \\ | + | 内容におかしな点はなく、スマホや財布は置き去り。\\ |
- | 花柚さんから話を聞くに、姉が幽雅というアカウントを使っていることは知っていて、現在地について何かつぶやいている可能性があると思ってはいたものの、幽雅は鍵アカウント、かつフォローはしていなかったので中身が見えず困っていたらしい。\\ | + | 玄関に残った靴の種類からサンダルで家を出たことが分かっており、それほど遠くない場所で命を絶ったと思われる状況だった。\\ |
- | \\ | + | |
- | 2週間前、「ありがとう」というメッセージが届いて以降彼女は音信不通であり、それと時を同じくしてSNSの更新も止まっている旨を伝えると、花柚さんはリアル側のゆうちゃんの身辺について話してくれた。\\ | + | |
- | \\ | + | |
- | 曰く。ある日花柚さんが姉の部屋の前を通りかかると、珍しく扉が開いていた。\\ | + | |
- | なんとはなしに中を覗いたところ、部屋には誰もおらず、机に置かれたスマホとパソコンが物理的に壊されていた。\\ | + | |
- | どうした事かと思い部屋に入ると、壊された端末の横に、手紙が一通置かれていた。\\ | + | |
- | 中身は**遺書**で、筆跡は確かに姉のもの。机のパソコンやスマホは自分で壊したとのこと。その他内容にもおかしな点はなかった。\\ | + | |
\\ | \\ | ||
問題は、**その後鴫原柚子の遺体が見つからないこと**である。\\ | 問題は、**その後鴫原柚子の遺体が見つからないこと**である。\\ | ||
行 40: | 行 22: | ||
遺書の中には、「できれば海に散骨してほしい」「お葬式に学校の人は呼ばないでほしい」といった、自身の**弔い方**に関する記述があった。\\ | 遺書の中には、「できれば海に散骨してほしい」「お葬式に学校の人は呼ばないでほしい」といった、自身の**弔い方**に関する記述があった。\\ | ||
遺書を残していて弔われる気もあるのなら、見つからないような場所で死ぬのは違和感がある。\\ | 遺書を残していて弔われる気もあるのなら、見つからないような場所で死ぬのは違和感がある。\\ | ||
- | \\ | ||
- | 加えて、彼女は財布もスマートフォンも持たず、靴ではなくサンダルで家を出ているそうだ。\\ | ||
- | 仮に生きていたとして、周囲、あるいはインターネット上に身を寄せられるような支援者がいれば迎えに来てもらうこともできるかもしれないが――わたしと花柚さんの知る限り、彼女の周りににそういった人物は居なかった。\\ | ||
\\ | \\ | ||
鴫原柚子は未だ「**行方不明者**」として扱われており、行き先の手がかりすら見つかる気配がないのだという。\\ | 鴫原柚子は未だ「**行方不明者**」として扱われており、行き先の手がかりすら見つかる気配がないのだという。\\ | ||
- | \\ | ||
- | ――「柚子さんの部屋を見せてもらうことはできますか?」。\\ | ||
- | 考えるより先に、指先がそう文字を打ち込んでいた。\\ | ||
\\ | \\ | ||
わからない。\\ | わからない。\\ | ||
行 58: | 行 34: | ||
わからない、かつ知りたいのなら、知りに行くしか方法はなかった。\\ | わからない、かつ知りたいのなら、知りに行くしか方法はなかった。\\ | ||
\\ | \\ | ||
- | わたしとゆうちゃんには共通点がいくつかある。\\ | + | ――「柚子さんの部屋を見せてもらうことはできますか?」。\\ |
- | 生まれの性が女の子であること。18歳で同い年なこと。関東に住んでいること。\\ | + | |
- | 不登校であること。リアルに友達がいないこと。ほとんど家から出ずに過ごしていること。\\ | + | |
- | 家族と折り合いが悪いこと。でも一応殴られたり、放り出されたりはしていないこと。\\ | + | |
- | \\ | + | |
- | ――そして何より、**共鳴者**であること。\\ | + | |
\\ | \\ | ||
- | ゆうちゃんの共鳴は『**誘眠**』。\\ | + | わたしは、わたしの持つ共鳴、『**過去視**』を用いて彼女の足取りを辿り始める。\\ |
- | わたしは『**過去視**』。\\ | + | |
- | 出会いからして、**支援課**のカウンセリングの中で登録させられた共鳴者のマッチングアプリ(あくまで友達になるための)でのやりとりだ。\\ | + | |
- | わたし達は、双方瞳に纏わる能力を持つという点で一際強く結びついていた。\\ | + | |
\\ | \\ | ||
- | 花柚さんに連絡し、送られてきた住所へ向かう。\\ | ||
ゆうちゃんの部屋から、彼女が向かった先へ。\\ | ゆうちゃんの部屋から、彼女が向かった先へ。\\ | ||
そこで起きた出来事と、その先へ。\\ | そこで起きた出来事と、その先へ。\\ | ||
\\ | \\ | ||
- | 見て、追って、辿り着いた場所に居た少年は、黒いローブの裾をはためかせ、夜色の瞳をぎらぎらと輝かせていた。\\ | + | 見て、追って、辿り着いた場所に居た**少年**は、黒いローブの裾をはためかせ、夜色の瞳をぎらぎらと輝かせていた。\\ |
\\ | \\ | ||
- | 「土は土に、灰は灰に、塵は塵に。\\ | + | 「土は土に、灰は灰に、塵は塵に――\\ |
キミも、奪い返しに来たンダロ?\\ | キミも、奪い返しに来たンダロ?\\ | ||
- | 大切な誰かの、とこしえのモノとなるハズだった安寧ヲ――」 \\ | + | 大切な誰かの、とこしえのモノとなるハズだった安寧ヲ。」 \\ |
\\ | \\ | ||
\\ | \\ |